インド最大の都市ムンバイ(SB Stock/gettyimages)

 9月20日インド政府は従来25%もしくは30%(会社規模による)だった法人税率を22%まで引き下げると発表した。こういった税制改正はインドでは特に珍しいことではないのだが、日本の感覚では理解しにくい点が1つ。それはこの減税が「2019年4月1日から」遡って適用されることとなった点だ。

インド関連のビジネスをしている人ならばもう十分感じ取っていると思うが、2019年4月~2020年3月のいわゆる2020年3月期、インド経済の状況は非常に悪い。 代表的なものが自動車産業。今インドでは自動車業界はどこも売上が著しく悪く、ここ数カ月ずっと前年同月比40%近い売上減を続けている。さすがに10月末にあるディワリのお祭り以降は持ち直すとは言われているものの、それでも1年トータルで自動車産業の売上は10%以上落ちると言われている。

 この経済成長率の下方修正に加え、RBIはその政策金利も0.25%引き下げ5.15%になることも発表した。これで今年に入り5回連続の「引き下げ」となる。RBIやインド政府は金利引き下げによる貸し出しの増加 → 設備投資の増加を期待しているのだが、上記の自動車不況により市場全体が委縮している中でどれだけ設備投資が増えるかは不透明だ。

 さらに、政策金利の引き下げは当然貸し出し金利の下落にもつながるため、上記の金融問題で弱っている金融業界の体力を奪うことにもなりかねない諸刃の剣とも言える。逆に言うと、景気対策としてインド政府が打てる手が限られてきているとの見方もでてきている。

 とは言うものの悲観的な話ばかりではない。

 前述の自動車不況もアナリストたちの意見は「来年には改善する」という点で一致している。それは今回の自動車不況がインド経済の構造的な問題から起因するものでなく、在庫調整や景気循環由来のものだと見られているからだ。

 また「インド経済のアキレス腱」である「ルピー安」もようやくトンネルの出口が見えてきたように感じる。去年の後半の底なしのルピー安は今年に入り少し持ち直し、8月に再び大きく下落したものの、そこから大崩れすることなくまた少しずつ相場を戻している。

 そして、何よりインド経済を元気にしているのが南インドを中心に活躍している「インド発ユニコーン企業」の存在だ。日本でもビジネスを展開している世界2位のホテルチェーンOYOを筆頭に、電子決済のPaytm、ネット通販のSnapdeal、インド発のシェアライドのOLAなどは、ソフトバンクを代表とする世界中の投資家のお金を貪欲に飲み込み成長している。

 ただ私はこの「インド発ユニコーン企業」にも近いうちに少しリセッションが入るように感じている。もちろんこれらのインドのユニコーン企業はどれも素晴らしい企業だし、長期的には成長することは間違いない。ただ、世界中でダブついたお金の流れ込む先として、インドのスタートアップ企業は今のところ過剰に評価されているように感じるのだ。

 OYOは「世界2位のホテルチェーン」を名乗っているが、マリオットやヒルトンほどそのクオリティに統一性があるか? 答えはNoだ。Paytmはネットインフラが脆弱なインドでスムーズに現金より時間をかけずに支払いができるか? 答えはNoだ。SnapdealはAmazonほどの使いやすいインターフェースを備えているか? 答えはNoだ。OLAはUberほど厳格にドライバーの認証や管理を行っているか? これも答えはNoだ。

 今話題になっているWeworkのように、過度に評価されていたスタートアップには必ず一度はリセッションが入る。おそらくインドのユニコーン企業にもそのタイミングが近いうちに来るだろう。そして市場から冷静な評価を受けたあと再び力強い成長軌道に乗るのだ。

 インド経済を語る上でやはり共通のキーワードになるのは、

 「成長は早くはない。しかし確実に成長する」

 である。

 今回の自動車不況も、金融不安も確かに短期的には危なっかしいものに見える。そして将来インドのスタートアップへのリセッションがあるかもしれない。

 しかしそんな短期的な落ち込みがあっても、インドはその人口動態とその年齢構成、地政学的ポジションなど大局的な見地からゆったりとしかし確実に成長するだろう。

                         (2019年10月8日)

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私も、ほぼ同じような考えです。インド経済は短期的には非常に悪化しつつありますが、長期で見ると中国を凌ぐ経済大国になると思っています。

それは何故かといいますと、一にも二にも人口であり、人口の年齢構成です。

下は全人口における生産年齢人口の比率です。

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これを見ますと、2030年ころには、中国と同じような高い割合になり、その後はぶっちぎりになります。2024年ころにはインドは中国の人口を抜いて世界一の人口を誇るようになりますから、2028年くらいには、生産年齢人口も世界一になるということです。

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『世界2位の人口大国であるインドの「出生数」は驚きの約2500万人、日本25倍以上である。総人口が日本の約10倍であり、出生率も2.0を大きく上回っているため当たり前と言えば当たり前の数字であるが、毎年オーストラリアの総人口くらいの赤ちゃんが生まれると言えばそのすごさがイメージしやすいだろう。 当然総人口に占める若年層の割合も非常に高く、インド全体の平均年齢は日本の47歳と比較して驚きの27歳。とにかく「若者」が多いのがインド市場の特徴なのだ。以前からこのコラムでもお話ししているように、このようなインド市場の「若さ」は21世紀の産業の中心となる「IT」を受け入れやすい土壌となり、インド市場はその「量」だけではなく「質」の面でも非常に有望なものと期待されている。』

 

中国も世界第2位の経済大国になるまで、短期的には危機的な状況もありましたし投資が滞ったときもありましたが、ここまで伸びたのも、世界一の人口を抱え、豊かにすれば世界一の市場になると先進国が思ってどんどんお金を注いでいったからです。中国は共産国家という非常なリスクがありましたが、それでも世界一の人口を抱えていることで大きな市場へと育ちました。

世界一の人口ということは将来的に世界一の市場になるということですから、問題が山積している今、インドに強固な基盤を築けた企業は大きく伸びると考えています。

毎年、東京都の人口よりはるかに多くの人口が増えているということは驚異的なことです。

中国も日本も韓国も、高齢化と人口減に突き進んでおり、どうしても国力の凋落は避けられません。

世界の先進国は、中国が豊かになって民衆も情報が受け取れるようになれば民主化に進んでくれると期待していたのですが、全く逆行しています。

人口減や高齢化もあり、民主化と反対の方向に進む共産国ということもあって、中国は市場としてだんだん輝かなくなっていくと見ています。それに代わって、世界一の人口となるのがインドですから、やはりインドには期待します。

 

また、人口だけでなく、インドでは下のカーストから抜け出すために、ITなど高度な技術職を必死で目指す若者が多く、もともと頭のいい民族である上に本気度では日本と比べものにならないと思いますので、その点も伸びる要素です。

 

ただ、インドはすべてがむちゃくちゃでいい加減な国のような気はします。進出する企業には大きなリスクがあるのは確かで、インド関連はあまり人には勧められないのは確かです。