脱炭素の大競争時代へ

バイデン政権なら激変のエネルギー・環境政策

「4年で2兆ドル投資」で脱炭素へ加速

 

開票状況から勝利が近いと見られるバイデン前副大統領(写真:REUTERS/Kevin Lamarque)

現地時間の11月3日に投開票されたアメリカ大統領選は異例の激戦となっており、日本時間の5日午後になっても最終結果は判明していない。

中西部などの激戦州では開票が遅れた郵便投票の集計が進むにつれ、いったんは劣勢が伝えられた民主党ジョー・バイデン前副大統領が盛り返しており、勝利に必要な過半数(270)の選挙人獲得を射程にとらえたとの見方が広がる。序盤のトランプ優位が消えていく「レッド・ミラージュ(赤い蜃気楼)」と呼ばれる現象が起きつつある。

ただ、共和党の現職、ドナルド・トランプ大統領は現地時間の4日未明、勝敗未定の段階で「大きな勝利だ」とツイート。演説でも「率直に言って勝った」と宣言し、集計中止を要求した。郵便投票を「不正だ」と断じ、「最高裁判所へ行くだろう」とも述べており、法廷闘争へ持ち込む構えだ。

パリ協定復帰、気候変動対策で経済再生

まだ勝敗は決していないが、開票状況からはバイデン優位で展開しつつあると言っていいだろう。

そこで、以下ではバイデン政権になった場合に激変が予想される「エネルギー・環境政策」に焦点を当てる。

 

バイデン氏は、2050年までの温室効果ガス排出量実質ゼロ達成と、コロナ禍で落ち込んだ経済の持続的な回復とを両立させ、それを通じて労働組合への加入権のある良質な雇用を数百万単位で創出することを目指している。

気候変動の危機を「でっち上げ」だと言って多くの環境規制を緩和し、クリーンエネルギー技術での主導権が中国などに渡ることを許してきたトランプ氏を批判。同氏が科学を軽視するがゆえにコロナ禍が一段と深刻化したとも主張している。

そのため、トランプ氏が脱退した「パリ協定」へ早期に復帰する方針だ。パリ協定とは、2020年以降の地球温暖化対策の国際的な枠組みであり、世界の平均気温上昇を産業革命前と比べて2℃より十分低く抑え、1.5℃に抑える努力を追求することを目的としている。バイデン氏は世界の脱炭素化をリードしていくとも述べており、まさに180度の大転換といえる。

バイデン氏は公約実現のため、就任第1期の4年間に2兆ドル(約210兆円)に上る巨額投資プランを掲げている。

その主な対象と狙いは以下のとおりだ。

 

①インフラ

道路、橋、上下水道、空港、港湾、緑地、送電網、通信網など老朽化したインフラを再建し、洪水や森林火災といった気候変動リスクに対する耐久性を高め、大気や水の汚染防止で公衆衛生を改善させる。

インフラ再建には国内の労働力と国産の資材を使用。それによって数百万の雇用を創出し、持続的な経済成長の基盤とする。また、全米に5Gのインターネット通信網(ブロードバンド)をあまねく整備し、イノベーション起爆剤とする。

EV普及へ50万カ所の充電ステーション整備

自動車産業

中国に対抗し、電気自動車(EV)とその部材の生産で世界のリーダーとなる。為替操作や過剰生産能力、政府権力乱用に対する貿易ルール強化の一方、国内では生産能力を増強し、部品やインフラを含む自動車産業全体で100万の新規雇用を創出、21世紀を勝ち抜く産業にする。

そのために連邦政府、地方政府、郵政公社などでEVなどアメリカ製クリーン車の購入を増やす。消費者がアメリカ製クリーン車に買い替える際には補助金を付与する。クリーン車の国内工場建設にも刺激策を導入する。

またEV普及のためのインフラとして、50万カ所の充電ステーション建設に投資する。蓄電池の研究開発にも支援する。

③公共交通機関

2030年までに人口10万人以上の全都市に、温暖化ガスを排出しないライトレール(都市型小型鉄道)や路線バスなどの公共交通機関を整備する。歩行者や自転車、電動スクーターなど超小型車両のためのインフラのほか、機械学習などAI(人工知能)を活用した信号も整備。アムトラックや民間鉄道貨物会社とディーゼル削減、電化拡大で協力する。

④電力

2035年までに電力部門のCO₂排出ゼロを実現する。税制優遇策を通じて太陽光発電風力発電など再エネによる発電を促進。エネルギー効率の向上とクリーン電力の採用を促すために発電・送電事業者に対する新基準も導入する。

既存の原発や水素発電も引き続き活用するが、厳格な安全基準を適用。CO₂回収・分離・再利用技術には税制優遇策を付与する。

⑤建物

4年間で400万棟の商業ビルの更新と200万軒の住宅の耐気候改修を行い、100万の雇用を創出する。商業ビル更新を通じ、ビル改修業やLED照明など高効率の電気器具製造業を活性化する。

また、払い戻し制度や低コスト融資制度を通じてエネルギー費用節減につながる住宅の更新や電化、高効率な窓の設置を促進する。老朽化した公立学校の校舎改修も推進する。

⑥住宅建

エネルギー効率の高い150万軒の住宅建設に連邦予算を投じる。低所得者用住宅を建設することで人種間の経済格差も縮小させる。

イノベーション

蓄電池やネガティブエミッション(CO₂回収・除去・再利用)、カーボンニュートラルな建築資材、リニューアブル水素(再エネを使って水から生産した水素)、最先端原子炉などクリーンエネルギー技術のコスト削減を促し、国産技術による早期の商業化を目指す。

連邦政府調達で4年間に4000億ドルのアメリカ製品を購入する「バイ・アメリカン」政策では、蓄電池や電気自動車などのクリーンエネルギー製品を中軸に据える。

また、クリーンエネルギー技術に対して「アポロ計画」を上回る規模の研究開発投資を推進。そのために、「気候変動に関する最先端研究プロジェクト局(ARPA-C)」を新設する。

⑧農業と自然保護

温暖化や自然災害防止に寄与する農業、自然保護活動を促進する。効率的な精密農業や新種開発、カーボンファーミング(CO₂貯留農法)などに対する金融支援を実施する。

「Civilian Climate Corps(気候対策市民部隊)」の創設を通じ、森林管理や植林、湿地帯の回復、用水系統の修復、生物多様性の維持など自然保護のための人材と技術を結集する。

また、廃坑となった石油・ガス井、石炭・石材・ウラン鉱山の埋め戻しや再開発を通じ、25万の雇用を創出。有毒物漏出などの環境汚染を防ぐ。

⑨環境正義(Environmental Justice)

大気や水質など環境面での公平性を重視する。有色人種、低所得者、原住民のコミュニティをはじめ、環境汚染の負担を過分に背負っている地域を連邦政府による対策を通じて正常な状態に戻していく。不利益の大きい地域の判別のため、データによるスクリーニング手法を導入する。

バイデン氏は石油・ガス産業の再エネへの移行を促す方針だ(写真:REUTERS/Angus Mordant)

以上、2兆ドル投資プランの中身を見てきたが、バイデン氏が最も重視するのは、アメリカ人の労働者が国内のインフラを建設し、そこへ組み込まれる製品や素材を生産することを通じて雇用を増やし、技術面での国際競争力を強化すること。そして、すべての労働者が労組加入権と団体交渉権を持つことだ。それこそが「良質なミドルクラスの雇用」だと主張する。

石炭や電力業界の労働者や地域社会に関しては、これまでの産業革命と経済成長に果たしてきた貢献に報いるため、「石炭・発電所地域に関するタスクフォース」を設置し、対策を検討することを公約している。

「ねじれ議会」で規模縮小でも脱炭素は加速

もっとも、これら2兆ドル投資のプランはあくまで「構想」であり、バイデン氏が大統領に就任しても実現が保証されたものではない。

ましてや大統領選と同時に行われた連邦議会選挙では、共和党が上院の多数を維持する公算が大きく、民主党過半数を維持する見込みの下院との間で「ねじれ」が続けば、政策遂行に支障が出るのは避けられない。投資の財源となる企業・富裕層増税とともに、規模が大幅に縮小となる可能性もある。

とはいえ、脱炭素はもはや逆戻りができない世界の趨勢となりつつある。アメリカ国内でもカリフォルニア州をはじめとした多くの州や、アップルなど多くの企業が独自に脱炭素への取り組みを進めており、ブラックロックなど金融界の間でも環境を重視するESG投融資が拡大している。

大統領の方針が明確に変わることになれば、アメリカ国内の世論も変わっていき、脱炭素へ向けた機運が加速することが予想される。石油・ガス・石炭業界寄りの議員も意識転換を余儀なくされるだろう。

その石油・ガス・石炭業界についてバイデン氏は、再エネ中心の産業へと「移行(transition)」を促していくと表明している。また、化石燃料に対する連邦政府補助金は廃止する方針だ。

これらのエネルギー産業はアメリカの経済基盤を支える主要産業の1つであり、膨大な雇用を抱えるだけに、一気に淘汰を加速させるような政策はとれない。徐々にシフトを促すという方向だろう。

シェールガス・オイルの掘削で用いるフラッキング(水圧破砕法)についても、バイデン氏は、全米規模のフラッキング禁止ではなく、「連邦公有地に限る」とテレビ討論会などで説明している。フラッキングは州政府か民間の保有地に集中しており、バイデン氏の提案による影響は限定的と見られる。

バイデン氏勝利なら、脱炭素へ向けた国際競争も激化する見込みだ。10月26日に菅義偉首相が所信表明演説で表明したように、日本も欧州諸国などに遅れて2050年の温室効果ガス排出実質ゼロを打ち出した。日米欧、そして中国が足並みをそろえてカーボンニュートラルを掲げたことで、脱炭素の大競争時代へ突入する。

重要なのはスローガンよりも、目標達成のための具体的な戦略だ。水素、蓄電池、CO₂回収、省エネなどの次世代技術で世界をリードするイノベーションを起こせるか。日本としても官民挙げた取り組みの強化が問われることになる。

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このコラムでは、最後の文章が最重要です。

 

水素、蓄電池、CO2回収、省エネなどの次世代技術で世界をリードするイノベーションを起こせるか・・・・

 

日本が生き残るにはこれに尽きますね。

いまのところ、水素でイノベーションを起こしそうなのは山王。

後の項目に関してはもっと詳しく調べてみないとわかりません。

CO2回収は、ユーグレナが面白いと以前に思ったことがありますが。

それから調べてないのでどこまで進んでいるかは知りません。

また、いろいろ調べます。