手のうち見せない中国

中国「輸出管理法」施行 法律の狙い 日本への影響は

中国は1日、安全保障に関わる製品などの輸出規制を強化する「輸出管理法」を施行しました。中国政府は、「開放性と透明性のあるビジネス環境を提供していく」としていますが、対象となる品目などは公表されておらず、日本企業の間では、懸念も強まっています。

「輸出管理法」とは

中国の「輸出管理法」は、国の安全や利益を守るためだとして、軍事転用が可能な製品や技術などを対象に輸出を許可制にするほか、特定の外国企業などをリスト化して輸出を禁止したり制限したりします。

法律は1日施行されましたが、今のところ対象となる品目や企業のリストは公表されておらず、具体的な運用には不透明な部分が残っています。
 
これについて、中国外務省の華春瑩報道官は1日の記者会見で、外国企業が不安を持つことは理解できるとしたうえで、「中国は、各国企業に公平公正で開放性と透明性のあるビジネス環境を提供できるよう努力していく」と述べ、懸念はあたらないという考えを強調しました。

バイデン氏の貿易政策など見極めながら運用を検討か

今回の法律は、アメリカのトランプ政権が中国の通信機器大手、ファーウェイなどをリスト化して輸出を規制していることに対抗する狙いがあり、専門家の間では、今後、大統領選挙で勝利を宣言したバイデン氏の貿易政策などを見極めながら運用を検討するのではないかとの見方も出ています。
 
希少な資源、レアアースなどが対象となれば、中国からの輸入に頼る日本企業にも影響が出る可能性があるだけに、恣意(しい)的な運用が行われないか、懸念も強まっています。

日本への影響は? 関心はレアアースが対象になるかどうか

輸出管理法は、対象となる品目や具体的な運用の在り方が明らかにされていないことから、日本企業も注視しています。

関心を集めているのが、希少な資源、レアアースが対象になるかどうかです。

レアアースは電気自動車のモーターのほか、家電の精密部品などの生産に欠かせず、日本は、全体のおよそ6割を中国から輸入しています。対象になった場合、これまでどおり入手できるのか、新たにどのような手続きが必要になるのか、懸念されています。

また、「再輸出」と呼ばれる規定も影響が懸念されています。

これは、中国で生産された素材を輸入し、日本国内で加工してアメリカなど、ほかの国に輸出した場合も規制の対象になるという内容です。輸出した製品を最終的に使用する企業が問題視された場合、中国からの素材の輸入に影響が出かねないと見られています。

また、直接、中国から素材を輸入していない場合でも、自社が購入する部品などに使われている中国の素材の割合によっては規制の対象になる可能性も指摘されています。
 
このほかの懸念の1つに「みなし輸出」という規定があります。

これは、中国国内であっても、中国人から外国の企業や外国人に対して製品や情報などを提供すると規制の対象になる場合があるというものです。

現地の中国人スタッフと日本人駐在員とのやり取りが当局への申請や許可の対象となれば、日常的な業務に支障が出ると心配されています。

東京の磁石メーカー 取引先の中国の業者から情報収集

原材料を中国からの輸入に頼っている日本のメーカーの中には、今後も安定的に調達できるか不安を抱えているところもあります。

このうち東京の磁石メーカー「マグエバー」は、中国からレアアースの一種「ネオジム」が含まれる製品を年間およそ50トン輸入していて、強い磁力を持つネオジム磁石を使った日用品や産業用の部品をつくっています。

10年前、中国がレアアースの輸出規制を強めたときは取引価格もおよそ4倍に跳ね上がったほかネオジムの調達も難しくなり、住宅用の建材をつくるメーカーや医療機器メーカーなど取引先の納期に遅れるといった影響が出ました。

今回の法律の施行によってネオジムが規制強化の対象になるかどうかは明らかになっておらず、会社ではただちに影響が出るとはみていません。

ただ今後、安定的にネオジムを調達できるか不安だとして、ネオジムの在庫をふだんより20%ほど多く確保しているほか、取り引きをしている中国の業者と毎日のように連絡をとって情報を収集しています。
澤渡紀子社長は「レアアースが対象に含まれるのかどうか分からず取引先からも心配だという問い合わせが多く寄せられています。何が起きても出荷が遅れるなどの影響が出ないように準備をしておきたい」と話していました。

大手電機メーカー 専門の部署設けリスク避けるための対応強化

海外に製品を輸出していて米中両国による規制の板挟みとなっている日本企業の間では、専門の部署を設けてリスクを避けるための対応を強化する動きも出ています。

大手電機メーカーの三菱電機はことし10月、米中の規制の動向を分析し、違反しないよう各部署に注意を呼びかける「経済安全保障統括室」を設けました。

1日は中国の輸出管理法が施行されましたが、対象となる品目や具体的な運用方法が明らかにされていないことから情報収集に努めていました。

この会社では家電から宇宙関連まで幅広く事業を展開し、海外に多くの製品を輸出しています。昨年度の海外の売り上げ高およそ1兆8000億円のうち、アメリカと中国がいずれも4000億円あまりでそれぞれ20%ほどを占めています。ことし9月にはアメリカが始めた規制を受けて中国の通信機器大手ファーウェイへの半導体の出荷を停止しました。

今回の中国の輸出管理法もビジネスに影響が及ぶおそれがあり、米中いずれの規制対象にもならないよう部署を横断して最適な対応を模索しています。
三菱電機経済安全保障統括室の伊藤隆室長は「中国政府からは管理品目のリストや運用の細則も明らかになっていないので、きょう、すべてが変わる訳ではなく落ち着いて対応しているが、『国家の利益』を前提に製品や技術、サービスへの規制が行われることにならないか、高い関心を持っている」と話していました。

また会社の輸出全般を管理している上田広之輸出管理部長は「アメリカも中国も非常に重要な市場で大切なお客様もおり、この法律ができたからといって事業をやめるのではなく、その中でどううまくやるかだ。それぞれのコンプライアンスを順守しながら輸出していく方法を導き出していく」と話していました。

中国の狙いは

中国は、貿易面で国際的な存在感をいっそう高めることを目指していて、今回の輸出管理法は、アメリカなど、外国との対立が激化した時にいわば武器として用いるねらいとみられています。

中国は11月、日本など、東アジアを中心に15か国が参加するRCEP=地域的な包括的経済連携で合意しました。

さらに、習近平国家主席は、TPP=環太平洋パートナーシップ協定への参加についても「積極的に検討する」と初めて表明しました。
 
米中の対立が深まる中、習主席は、「国際的なサプライチェーンの中国への依存度を高めることで外国による供給網の遮断に対し、強力な反撃と抑止力を形成する」とする中長期的な方針を示していて、貿易面での国際的な影響力をいっそう高めるねらいを前面に押し出しています。

国際貿易センターによりますと、去年の中国の輸出額は2兆4985億ドルと、2010年と比較すると58%増えていて、世界全体の輸出額のうち13.3%を占めて国別でトップになっています。

今回の輸出管理法は、影響力を高めるにあたり、アメリカなど、外国との対立が激化した時にいわば武器として用いるねらいとみられています。

過去にレアアース輸出停止も

中国は、2010年、沖縄県尖閣諸島沖で中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突した事件のあと、日本への輸出手続きを事実上、停止し、このときは多くの日本企業に影響が出ました。

当時、中国は日本やアメリカへのレアアースの輸出規制について、資源の保護などを理由にしていましたが、日本などがWTO世界貿易機関のルールに違反していると訴えた結果、WTOは中国に対して是正を勧告しています。

また、アメリカとの間では、おととし3月にトランプ政権が鉄鋼製品などに関税を上乗せして以降、幅広い輸入品に高い関税を上乗せしあう激しい貿易摩擦に発展し、米中の対立は深まったままです。

さらにことしに入ってからはオーストラリアのモリソン首相による新型コロナウイルスの発生源をめぐる発言に中国側が強く反発し、オーストラリアからの一部の肉製品の輸入を停止したり大麦に関税を上乗したりする措置を相次いでとっています。

専門家「政治的案件が生じるたび使われれば大きなリスク」

「輸出管理法」について、中国の政治外交史を研究している東京大学大学院の川島真教授は、アメリカとの対立を念頭にしたものだとしたうえで「アメリカが圧力をかけた場合に対抗措置をいつでも合法的にとれるようにするものだ」と指摘しました。

そのうえで対象となる品目や企業のリストが公表されていないことについて、「幅が広いというか対象を限定しなくてもよいような法律になっていて基準が明確でなく決まるプロセスもわからない。尖閣諸島をめぐる案件のみならず政治的な案件が生じるたびに中国が輸出管理法を使ってくることになればかなり危険で、大きなリスクになる」と述べ日本にも影響が及ぶおそれがあると懸念を示しました。

さらに、対象となる品目について、代替できないものを狙い撃ちしてくる可能性があると指摘したうえで、「レアアースは精密部品に非常に多く使われているので、中国が規制した場合に、どのように製品を作っていくのかとても難しい問題になる。企業としては自社の製品や部品などのサプライチェーンのリスト化を進めて、何かあった場合にすぐに対応できる体制を作っておくことが肝要になる」と述べました。

経済同友会 櫻田代表幹事 経営戦略への影響避けられず

経済同友会の櫻田代表幹事は定例会見で「制度の詳細やどのように運用されるのかもわからず、今の状態では非常に困る」と述べました。

そのうえで日本企業への影響については「米中の対立の中で定められたルールだと誰もが思っている。市場としてだけでなくサプライチェーンとしても中国を組み込んでいる企業は、ビジネスモデルや輸出ルートを見直さないといけないのではないか」と述べ、経営戦略への影響は避けられないという見方を示しました。

梶山経済産業相「われわれが前面に立って対応」

梶山経済産業大臣は1日の閣議のあとの記者会見で「どのような運用がなされるのか、どういった品目が対象になるかは明らかでなく、日本企業の経済活動に影響を与える可能性を含めて高い関心を持っている」と述べました。

また、今回の法律は、アメリカ政府が中国の通信機器大手、ファーウェイなどをリスト化して輸出を規制していることに対抗する狙いがあり、中国政府の運用しだいでは米中双方の企業と取り引きをしている日本企業に影響が出ることも懸念されています。

これについて、梶山大臣は、「企業には米中それぞれの市場でのビジネスが阻害されないようしっかりと備えていただきたい。過度な萎縮は不要で、対応が難しいことがあればわれわれが前面に立って対応していく」と述べました。
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今日から中国の輸出管理法が施行されたはずなのに、まだ、その目的たる管理品目を明らかにしません。
これは、意図的に手の内を隠して、都合のいいようにどうとでも嫌がらせをしようということでしょう。
 
日本は覚悟を決めて、レアアースで脅しをかけられることを考慮に入れて、対策を講じていかなければ大変なことになります。
                (2020年12月1日20時20分)