山王の来年に期待する理由

■2020年1月30日ビッグサイトでの『ENEX』山王展示ブース取材報告

■水素透過膜の概要


 今回の記事の本題である水素透過膜・分離膜は現状世界中で研究・開発されていますが、私としてはこの水素透過膜に関しては山王のポテンシャルは高いのではないか?と感じています。

 『水素透過膜』とは何なのか?から説明していきます。

 そもそも水素透過膜は高純度の水素を安価にかつ簡便に取り出すために研究されている手段の一つです。
 山王(3441)が産総研(国立研究開発法人)と開発した『水素透過膜』とは様々な気体から水素だけを99.999%以上で取り出す水素精製を担う技術です。

 現在の水素ステーション燃料電池車に供給されている水素の純度は99.97%以上の高純度水素であり、この水素製造方式の主流なのがPSA方式です。

PSA方式>
 原料ガス⇒脱硫器⇒改質器⇒CO変成器⇒圧力スイング吸着器(何層ものフィルター)⇒高純度水素(99.97%以上)
 設備投資には3億円は少なくともかかると言われており、現状では費用負担をペイすることが難しいので国の方針のように増えてはいません。

<山王が開発した水素透過膜>
 原料ガス⇒水素分離装置(改質器)⇒高純度水素(99.999%以上)

 水素透過膜や水素分離膜は世界中で研究・開発されており、圧延で作ってみたり、スパッタリングで作ったり、また材質もパラジウム単体やパラジウム:銀であったりと様々な物が出てきています。

 水素透過膜の優れた点はなんといっても

 【触媒】【分離】【高純度化】

 の三要素を1工程でできることに大きな利点があり、また従来のPSA方式では装置が大規模な水素プラントでしか水素生成が出来なかったのですが、水素透過膜であれば水素生成が小型化できることから家庭用の蓄電池のエネファームや中規模の工場での副生成ガスから水素を取り出してエネルギー(資源に変換)に出来、今後さらに注目される技術です。

 例えば、汚泥などのバイオマスからメタンを水素透過膜で水素精製する場合↓
 水素透過膜を用いた装置でメタンに水蒸気をぶつけることで下の化学式になります。
・CH4+H2O → CO+3H2
 …↑の反応で水素だけが透過膜を抜けてCOだけが残るが、水蒸気はそのままそそがれるので
・CO+H2O → CO2+H2
 ↑となりさらに水素が抜けて最後に高純度のCO2だけが残る。

 このCO2は農業でハウス栽培に向けて販売も可能になるので全く無駄が無く究極のゼロエミッション社会が実現できるようになります。

 水素透過膜はメタン側(入口)と水素側(出口)の気圧差で水素が出てくる仕組みなので余分な工程を設ける必要もありません。
 今までPSA方式しか主流では無かったために難しかった水素精製装置の低コスト×小型化の実現に大きく近づくことになります


■ENEXで進展を確認出来たこと


↓【2019年3月4日】の山王のIRの開示

 高強度の水素精製用パラジウム銅合金を電解めっきでワンステップ成膜 ―従来成膜法に比べ簡単・安価・省エネを実現!―
 http://pdf.irpocket.com/C3441/bFn0/MEoU/DFjC.pdf

 今回ENAXに取材に向かったのは上記の技術進展の確認です。
 上記の技術に関して現在特許申請中であり、取得できるかは現状ではまだわかりません。

 特開2019-202259「水素透過膜及びその製造方法」
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/p0200
 ※↑リンクが開けない時は特許検索で検索して頂くと詳細が分かります。

 私が一番最初に山王の記事を書いた時も水素透過膜の特許申請中であり、その時の名称は「金属複合水素透過膜とその製造方法」を申請していたことに着目したものでした。
 前回も水素透過膜で、今回も水素透過膜で何が違うのか??

 実は今回の特許申請は前回特許の発展⇒完成版であり、実用に耐えうるであろう品質レベル、コストメリットを兼ね備えた水素透過膜の製造方法にまつわる申請であり、前回特許に重ねて固め出しをすることからも水素透過膜事業への山王の本気度もうかがう事が出来ます。

 水素透過膜として市場にあるものとしてパラジウム:銀もありますが、山王が度重なる研究によって最も適しているのがパラジウム:銅であり、かつ47:53の膜が適している事が分かりました。
 前回の特許ではスパッタリングという方法で透過膜を生成していましたが、今回の特許では電解メッキという一般的な安価で容易でかつ早いめっき手法でワンステップ生産(ステンレス板に直接電解メッキで水素透過膜を生成して剥がすだけで完成)出来る大変素晴らしいものです。

 よって、前回2017年に取得した特許とは数段上の実用特許に成ると理解いただくと良いと思います。

                                            (相川伸夫という人のブログより)

※※※※※

↑↑↑

これが2020年3月12日の記事でした。

 

そして、その後の2020年5月21日に

 ↓↓↓

                        2020 年 5 月 21 日

各 位

      神奈川県横浜市港北区綱島東五丁目 8 番 8 号

      株 式 会 社 山 王 代 表 取 締 役 社 長 三 浦 尚 (コード番号:3441)

      問 い 合 せ 先 取締役管理本部長 浜 口 和 雄

 

   東京工業大学産業技術総合研究所との共同出願による特許取得のお知らせ

 

当社は、国立大学法人東京工業大学、及び国立研究開発法人産業技術総合研究所と共同で 研究、開発を行いました発明「水素透過膜及びその製造方法」につきまして、下記の通り特許 を取得致しましたので、お知らせ致します。

 

              記

1.概要 【特 許 番 号】 特許第6695929号

【発明の名称】 水素透過膜及びその製造方法

【特 許 権 者】 国立大学法人東京工業大学、国立研究開発法人産業技術総合研究所

          株式会社山王

【特許出願日】 2018年5月22日

【特許登録日】 2020年4月24日

【出 願 番 号】 特願2018-098024

 

【本特許取得の意義】 現在、国立大学法人東京工業大学、及び国立研究開発法人産業技術総合研究所 福島再生 エネルギー研究所と研究、開発中である「電解めっきによる水素透過膜」及びその製造方 法に関する特許となります。

本特許技術を用いることで、非常に高価なパラジウムの使用 量を抑制し、低コストで水素透過膜を製造することができるとともに、さらに安価な水素 精製装置を提供することが可能になります。

水素社会の普及に大きく寄与する技術として、 あらゆる水素エネルギー関連分野において実用化が期待されています。本技術を権利化す ることで、実用化の際には大きな競争力を得るとともに多くの収益の機会を得ることが期 待されます。

 

2.今後の事業に与える影響

今後、水素エネルギー関連企業及びその関連業界からの需要(影響)が期待できますが、 今期2020年7月期の当社業績に与える影響は軽微であると思われます。

また、今後、当社の業績に影響を及ぼす事象が判明した場合には、速やかにお知らせ致 します。

                                  以上

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この特許IRの中の『水素社会の普及に大きく寄与する技術として、 あらゆる水素エネルギー関連分野において実用化が期待されています。本技術を権利化す ることで、実用化の際には大きな競争力を得るとともに多くの収益の機会を得ることが期 待されます。 』の文言は、菅首相が誕生して、水素社会を目標とする大きな指針が出た日本において、非常に大きな役割を担います。

この特許技術が実用化されれば、日本は一気に水素社会に近づきます。

水素を安く製造する方法、これこそが、いま求められている革新的な技術なのです。

 

そして、山王が、実用化の目途とした時が来年早々には来ます。

私が来年の山王に期待しているのはこういう理由からです。

                    (2020年12月29日13時)